朝の時間は、家族にとって一日のスタートを切る大切な時間です。しかし、特に小さなお子さんがいるご家庭では、「着替えない」「ごはんを食べない」「時間が足りない」といった悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
子どもが朝の支度をスムーズにできるようにするには、ちょっとした工夫と習慣づけが効果的です。
今回は、子どもの朝の支度についてお話します。
前日の準備を習慣化
朝はなるべく“やること”を減らすことがカギです。服や学校の持ち物などは前日のうちに用意しておきましょう。準備ができていることで、朝に慌てることが少なくなります。
やることを見える化する
「次は何するの?」と毎回声かけするのではなく、やるべきことを視覚的に示すと、子ども自身が動きやすくなります。例えば、「起きる」「顔を洗う」「歯をみがく」「着替える」「朝ごはんを食べる」など、一連の流れをイラストや文字で表した支度表を作ると効果的です。
時間の目安を伝える
「あと5分で出発するよ」など、時間の感覚を伝えてあげることで、自分でペースを考えるきっかけになります。タイマーや時計を使って、「時計の長い針がここまできたら着替えるよ」といった声かけも有効です。
子どもに選ばせる
すべてを親が決めてしまうのではなく、「今日はこの服とこの服、どっちにする?」など、子どもが選べる場面を作ると、自分から支度に取り組みやすくなります。自分で決めたことには責任を持ちやすくなるため、習慣化もしやすくなります。
できたらしっかりほめる
支度がスムーズにできたときは、「早くできたね!」「自分でできてすごいね!」と、具体的に声をかけてあげましょう。ごほうびシールやスタンプを使って、達成感を目に見える形にするのもおすすめです。
発達段階で「急ぐ」という感覚が育っていないから
子どもは、大人と違って「時間を意識して行動する力」がまだ未発達です。「○分後に出かけるから早くしてね」と言われても、その○分がどれくらいの長さなのか、実感としてよくわかっていないことが多いのです。
また、「やるべきこと」よりも「今やっていること」や「目の前の興味」に意識が向きやすいため、支度の途中で遊びに気を取られたりするのも自然なことです。
集中力の対象が“大人と違う”から
子どもは、自分が面白いと感じたことに対してものすごく集中します。例えば、靴を履く途中で靴の模様をじーっと見つめたり、朝ごはんのスープの中の野菜をひとつずつ確認したり……。大人にとっては「今そんなことしてる場合じゃないでしょ!」と思えることでも、子どもにとっては“今いちばん大事なこと”なのです。
「周囲とのペースを合わせる力」が育ち途中だから
大人は、社会生活の中で「人と歩調を合わせる」「場の空気を読む」といった力を身につけていますが、子どもはその途中にいます。「みんなが待っているから早くしなきゃ」という意識は、年齢や経験によって少しずつ育っていくものです。特に未就学児や低学年の子どもは、「自分のペース=世界のペース」になりやすく、他人のスケジュールや都合は頭に入りづらいのです。
安心できる環境では“自分らしさ”が出やすいから
「家ではマイペースなのに、園や学校ではちゃんとやってる」という子も多いですよね。これは、家庭が子どもにとって安心できる場所であり、自分のペースを出せる空間だからこそ。言いかえれば、マイペースでいることは、子どもが安心して甘えられている証でもあります。
大人の「早くして」子どもには抽象的すぎる
「早く」「ちゃんと」「きちんと」といった言葉は、子どもにとってとても曖昧です。「早くってどれくらい?」「どのくらいちゃんと?」と、具体的な行動に落とし込めないと、動けなくなってしまいます。
大人が思っている「当たり前」が、まだ子どもにとっては“知らないこと”である場合も多いのです。
子どものマイペースさは、「自分の感覚に正直である」「目の前のことに集中できる」「安心して自分らしくいられる」など、実は大人が学びたいくらいの長所でもあります。もちろん、社会生活の中では「周囲と合わせる力」も必要になってきますが、それは経験と年齢の中でゆっくり育っていくもの。親や周りの大人ができるのは、「今のその子に合ったサポート」と「待つ姿勢」、そして「ペースを尊重する心」です。
朝の支度は、慌ただしい時間の中でも「子どもが一日の始まりに達成感を感じられるチャンス」でもあります。
完璧を求めすぎず、少しずつ「自分でできる」を積み重ねることで、子どもも自信をつけていきます。家庭に合ったやり方で、朝の時間を気持ちよくスタートできるよう工夫してみてくださいね。