8月。お盆の時期になると、おじいちゃん・おばあちゃんの家に行き、お墓参りをするご家庭も多いのではないでしょうか。
そもそも「お盆」とはどんな意味があるのでしょうか。幼児期からお盆について伝えていくことは、家族を大切にすること、ご先祖様を敬うことの大切さを理解し、思いやりや心の礼儀などを育むことに繋がります。
子どもに「お盆の意味」を伝えるときは、年齢や理解力に応じて やさしい言葉と身近な例え を使うのがポイントです。怖がらせず、温かく、感謝の気持ちが育つように伝えてあげましょう。
今回は「お盆」子どもへの伝え方や過ごし方などをお話します。
お盆は、ご先祖さまがこの世に帰ってくるとされる特別な期間です。一般的には、7月13日または8月13日から始まり、15日頃に終わります。日にちごとに行うことの流れを見ていきましょう。
迎え盆(7月13日または8月13日)
この日は、ご先祖さまを迎えるための準備をします。まず、仏壇やお墓の掃除を丁寧に行い、お花や果物などのお供え物を用意します。そして夕方には「迎え火」を焚いて、ご先祖さまの霊が迷わず帰って来られるように道しるべを作ります。家族みんなで精進料理を囲み、ご先祖さまへの感謝の気持ちを伝えながら過ごす日です。
お盆期間中(7月14日または8月14日)
この日は、家族でお墓参りに行き、ご先祖さまに手を合わせます。仏壇のお手入れをして新しいお供え物を置くこともあります。また、子どもと一緒に迎え火・送り火のごっこ遊びをしたり、精進料理を作ったりしながら、お盆の意味を伝えて楽しむこともおすすめです。
送り盆(7月15日または8月15日)
お盆の最終日であるこの日は、ご先祖さまを送り出す日です。夕方には「送り火」を焚き、ご先祖さまがまたあの世へ戻られるよう見送ります。仏壇のお供え物を片付けたり、家族で感謝の気持ちを伝える時間を持ったりすることも大切です。
お盆の期間は、地域や家庭によって日にちや過ごし方に違いがありますが、基本的には「迎え盆」「お盆期間中」「送り盆」の三つの段階でご先祖さまを迎え、感謝を伝え、送り出す流れで過ごします。子どもと一緒に楽しく、無理のない範囲でお盆の行事を体験し、家族の絆を深める時間にしてください。
小さい子(3〜6歳)向けの伝え方
3〜6歳くらいの小さな子に「お盆」のことを伝えるときは、わかりやすく、優しく、怖くない言い方で話すのがポイントです。日常生活に近い例えや、身近な存在(家族、絵本、食べ物など)を使って話すと、理解しやすくなります。
・シンプルな言い方
「お盆っていうのはね、天国にいるおじいちゃんやおばあちゃんが、“ただいま”っておうちに帰ってきてくれる時なんだよ。だから、“おかえりなさい”って言って、お花やごはんを用意して待っているの。」
・精霊馬を見せながら
「これはきゅうりの馬だよ。早く帰ってきてくれるように、きゅうりの馬に乗ってもらうんだって。なすの牛はね、ゆっくり帰ってもらうための乗り物なんだよ。」
→ 一緒に作るとより楽しく、理解が深まります。
小学生向けの伝え方
小学生向けにお盆の意味を伝えるときは、「なぜ行うのか」「どんな気持ちで過ごすのか」が伝わるように、やさしい言葉で理由や意味を説明してあげるのがポイントです。知識としても、心の学びとしてもよいきっかけになります。
・やさしい説明
「お盆っていうのは、天国にいるご先祖さまが、1年に一度“おうちに帰ってくる”って言われている時期なんだよ。だから、家族で“おかえりなさい”って迎えて、“ありがとう”って気持ちを伝える行事なんだ。」
・少し深い説明も加える(高学年向け)
「ぼくたちや家族が今ここにいるのは、昔のご先祖さまたちが生きて、家族をつないできてくれたからだよ。お盆は、そのご先祖さまに“ありがとう”って伝える大切な時間なんだよ。」
補足して伝えたいキーワード
【ご先祖さま】
ひいおじいちゃん・ひいおばあちゃん、そのまた昔の家族たちのこと
【お墓参り】
お花やお水を持って行って「ありがとう」「見守ってくれてありがとう」と伝える
【迎え火・送り火】
ご先祖さまが道に迷わないように「ここだよー」と合図するもの
【お供え物】ごはんや果物などを「食べてね」と気持ちをこめて用意すること
【精霊馬(きゅうりの馬・なすの牛)】
「きゅうりの馬に乗って早く来てね、なすの牛に乗ってゆっくり帰ってね」という思いがこめられてるよ
乳幼児(0〜3歳)
乳幼児とのお墓参りは、完璧にできなくて大丈夫です。意味がまだよくわからなくても、家族と一緒に「ありがとう」と手を合わせる体験は、心に残るやさしい記憶になります。
お墓参りに出かける前は、「これからおじいちゃんに“こんにちは”しに行こうね」「ありがとうを言いに行こうか」など、やさしい言葉で伝えてあげましょう。あまり難しい説明をしなくても、子どもは家族の雰囲気から“特別なこと”を感じ取ります。
当日は、暑さや虫刺されへの配慮がとても大切です。夏場のお墓は気温が高く、日陰も少ないことがあるため、帽子や水分、虫よけグッズなどを準備して、無理のない短時間の参拝を心がけましょう。手を合わせたり、お花を置いたりする簡単な動作を一緒にやってみるだけでも、子どもにとっては貴重な経験です。
幼児〜小学生(4〜10歳)
4〜10歳頃の幼児・小学生は、大人の話を少しずつ理解できる年齢です。だからこそ「なぜお墓参りをするのか」を、やさしい言葉で伝えてあげることが大切です。
子どもたちにとって、お墓参りは「静かにする場所」「よくわからない場所」になりがちです。でも、手を合わせたり、花を飾ったり、水をかけたりといった行動を一緒に体験することで、自然とその意味が心に残っていきます。
お墓の掃除を手伝ってもらったり、「これ、おばあちゃんが好きだったお菓子なんだよ」とお供えを一緒に置いたりすると、ご先祖さまとのつながりをより身近に感じられるでしょう。線香をあげるときや、手を合わせるときも、「ありがとうって思いながら、そっと手を合わせてみようか」と声をかけると、自然と静かな時間が流れます。
また、お墓参りは命のバトンを感じる機会でもあります。どこか「こわい」「しずかにしないと叱られる」場所ではなく、「会いに行く」「つながりを感じる」「ありがとうを伝える」温かい時間として体験させてあげましょう。
一緒に迎え火・送り火ごっこ
・迎え火・送り火ってなに?
ご先祖さまが迷わず帰ってこられるように、「こっちだよ」と火を焚いて目印にするのが迎え火。そして、お盆が終わるとき、「またね」と送り出すために焚くのが送り火です。火を使うのが難しい小さな子どもでも、紙や光を使って楽しくごっこ遊びができます。
◆迎え火・送り火ごっこのアイデア◆
・ 手づくり提灯ごっこ
折り紙や色画用紙で小さな提灯を作り、中にLEDライトや懐中電灯を入れて「おかえりなさい〜」と声をかける。
「きてくれてありがとう」「ここがうちだよ〜」など、声に出してごっこ遊び。
・ 牛乳パックや紙コップで灯篭作り
切り抜いた紙コップにお絵かきして、LEDキャンドルを中に入れる
玄関に並べて、「迎え火の灯りにしようね」と話す。
・ 外遊びとしての「火の光ごっこ」
蚊取り線香や焚き火が難しい家庭は、暗くなった時間に「光の道」を作る。光るおもちゃやライトを使って「ご先祖さま、こっちだよー!」と声をかける。
家族でクッキング
・「精霊馬(しょうりょううま)」を作ろう
「きゅうりの馬」と「なすの牛」は、ご先祖さまが乗って帰ってくるための“馬”と、ゆっくり戻ってもらうための“牛”のかたちをした野菜の乗り物です。地域によってはゆっくりお迎えするために迎え盆にはナスを、迷わずに帰れるように送り盆にはキュウリの場合もあります。ぜひ、風習に合わせた想いを込めて、子どもと一緒に飾ってみましょう。
◆「きゅうりの馬」「なすの牛」の作り方◆
材料
きゅうり(馬用)
なす(牛用)
①竹串や割り箸(車輪や足をつけるため)
②さつまいもや小さなじゃがいも(車輪にする)
③目玉シールや黒ごま(目をつけるのに便利)
◆作り方のポイント◆
1.きゅうりやなすを乗り物の胴体にします。
2.さつまいもやじゃがいもを輪切りにし、割り箸や竹串で固定して車輪を作ります。
3.黒ごまやシールで目を付けて、顔を作ります。
4.「馬はご先祖さまが早く帰って来られるように、牛はゆっくり帰ってもらうため」と話しながら作ると、子どもも理解しやすいです。
「お盆」がテーマの絵本を読む
お盆の意味やご先祖さまへの感謝の気持ちを、言葉だけで説明するのは小さな子どもには難しいこともあります。そんなときは、お盆をテーマにした絵本を一緒に読むことで、子どもが楽しく自然に理解できるように導いてあげましょう。
『じいちゃんのまつり』(鈴木まもる 著)
→ 祭りの中での家族のつながりや命の大切さをやさしく描いています。
『おぼんのおみやげ』(中川ひろたか 著)
→ お盆にまつわる風習や家族の思い出を伝える心温まるお話です。
絵本を通して、「お盆はみんなが家族を思う大切な時間なんだよ」と教えることができ、子どもも感情をこめて行事に参加しやすくなります。読み聞かせの後は、「絵本のお話どうだった?」と聞いたり、「おじいちゃんやおばあちゃんに会いに行くんだよ」と話して、日常の中でお盆の意味を感じられるようにしてみましょう。
お盆の時期は、どうやって過ごしていいのか分からない、というご家庭が多いかもしれません。
まずは難しく考えず、子どもと一緒に楽しめるお盆の過ごし方や、おじいちゃん・おばあちゃんの家に遊びに行くことからはじめてみてはいかがでしょうか。
ご家族みんなでご先祖様に感謝することで、夏の思い出にもなります。